ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

京町家のリノベーション~ずっと憧れてきた映画の中の部屋

京町家のリノベーション~ずっと憧れてきた映画の中の部屋

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呉服屋だった京町家をリノベーションして住まわれていた、インテリアコーディネーターの松本さん。その京町家の1階を自らのショップ兼アトリエにするため、土間を展示スペース、和室を洋室へと再度リノベーションすることになりました。その際、その空間に選ばれたある色には、建築の道からインテリアコーディネーターに転身した松本さんの生き方や、強い想いが込められていたのでした。

「この色を選んで本当によかった。大切にしていた町屋の印象、黒の建具や白の壁とも相性がばっちり。」

自分のワークスペースを真っ赤にペイント。それも、部屋全体を。

そんな思い切った選択に踏み切ったのには、ある強い想いがありました。
もともと、大学卒業後は設計事務所に勤めていた松本さん、その初めてのクライアントの依頼が、彼女の考え方に大きな変化をもたらしました。リフォームを希望していたそのクライアントの要望は、「とにかく、真っ赤な壁紙を使いたい」ということ。

その壁紙を探し求め、輸入の壁紙やカーテンのショールームに行くと、そこには、きれいに収めることや素材にこだわる住宅設計とは真逆の、むしろファッションに近い世界が広がっていました。

「本当に、とてもきれいでびっくりしたんです。」

その世界を知ってからというもの、どんどんそちらの道へと進んでいくことになります。

日本には壁紙やカーテンの種類が全然なく、自分の思い通りにできない、そう思って、輸入カーテンのショップに勤めたこともあったそうです。
しかし、そこで直面した新たな問題、それは輸入のカーテンは、あまりにも高級で手軽に使えるものではないということ。

「もっと色を使いたい、でも手軽に取り入れられるものでなければ…。」
そしてたどり着いたのが、自分でも簡単にできるペイントだったといいます。
「色を自由に選べるものってペイントしかないと思いました。」

その頃、ちょうど出産を終え、子育てをされていた松本さんは、インテリアコーディネーターとして、ブログを書き始めます。それが、今回のリノベーションで選んだ色の原点。

そのブログの中で、松本さんは映画の中のさまざまなインテリアにクローズアップし、それらを丁寧に紹介していきました。
「映画に物語があるように、部屋にも物語があるはずなんです。」
中でも、もっともこだわりをもって一番に紹介したのが映画「アメリ」の真っ赤な部屋。この部屋については多くの反響があったそうです。

「いつかは自分が再現しないと…」そんな、使命感にも似た思いもずっと持ちながら、インテリアコーディネーターの仕事を続けてきた松本さん。ようやく、それを実現することができたのが今回のリノベーションだったのです。

元々和室だったこちらの部屋、洋室にするため畳をはずして床を張り、壁を変えました。それなのに、なんだか納得がいかない・・・。部屋の変化を実感できずにいたといいます。

そんな時、頭をよぎったのが長年持ち続けてきた夢、「真っ赤な部屋」でした。
「小ぢんまりしたサイズ感もインテリアショップという用途もすべてばっちりでした。」
そうと決まれば早速行動。赤色のペイントサンプルを取り寄せました。しかし、やはり赤という色目だけに、なかなかこれとは踏み切れず、壁に貼り付けたサンプルカードを眺めては、悩む日々が続きました。

「最後は、直感で選びました」という「African dance」は、ダークな赤色。「この色を選んで正解でした。ワークスペースとして毎日長い時間を過ごす場所が、ちゃんと自分の居場所になってるな、って感じがするんです。」と話します。

とはいえ、自分ですべてペイントされた松本さん、実は1面ずつ色を付けていく中で、本当にこの色で大丈夫だったのだろうかとずっと不安に思っていたことも教えてくれました。ただ、2面、3面と色を塗りこんでいくうちにだんだんお部屋に馴染んできて、そんな不安も消えていったそうです。

「真っ赤なお部屋の中で座っていると、包まれているような感覚がして落ち着くんです。不思議ですよね、こんなにインパクトのある色なのに。」

今は赤の壁に合いそうなインテリアばかり探してしまうそうです。
「白色だと壁は背景にしかならないから、もっとお部屋の壁に色があればいいなと思いますね。」
そんな風に考えることができれば、壁の色選びはもっと楽しくなりそうです。

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    今回リノベーションに踏み切った京町家。 もともとリノベーションはされていましたが、 そこへさらに手を加えながら暮らすことに。

  • RBLIFE02_02(文中)

    建築の世界では、カーテンのことなど考える機会もあまりありませんでした

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    「きれいな色や模様に一気に魅かれました。」

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    自分でもできる、そして色が選べる、松本さんがやっとたどり着いたのがペイントでした。お客様の色選びの相談にも乗ります

  • RBLIFE02_05(文中)

    松本さんのコーディネートしたお部屋。「部屋が物語をもち、小物が語りかけてくるような、そんな部屋をつくりたかったんです。」

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    もともとは和室だった部屋。洋室に変えただけでは、なかなか思った通りにはなりませんでした

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    毎日毎日、壁にはって眺めていたというサンプルカード。いろいろな照明の下で色を見て悩み続けました

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    「壁に色があることで、一つの基準ができる、それに合わせてインテリアを選ぶのもすごく楽しいからおすすめです。」

プロフィール 松本さん(インテリアコーディネーター「DECOTE」名義で活動中)
場所 アトリエスペース(ビニルクロス、建具、扉、練り付け合板)
ペイント面積 約30㎡(使用量8kg)
色名 RB-75R31 African Dance