ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

コラム

02.素材について考える

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日本の家の歴史を考えるとそこにはあまりたくさんの色を使う事はありません。日本の美意識の源泉とも言える京都の東山文化、安土桃山時代に完成される茶室はそうした簡素な美意識の結晶とも言えます。壁は土の色、紙、木といった素朴な自然の素材の色です。日本人は素材の持ち味を活かしてそこから生まれる微妙な差異をあえて楽しんできたのです。そして素材をみせるということは、時間とともに変化する事を前提としています。時とともに風合いが増していくのです。

確かに色は暮らしにおいて重要な要素かもしれませんが、色をどんな素材に塗るのか、その素材の持ち味をどう活かすのかということも大事な事と言えます。下の写真はフィンランドを代表する建築家アルバーアールトのアトリエの外壁です。レンガの上から白く塗っているのですが、その下地は微妙に仕上げがされていてレンガの目地を半分ぐらい消しながら素材のかたちを残しているのです。アールトは様々なプロジェクトで白の色を違った素材に塗る実験を繰り返しています。同じ白でもレンガの白、木の白、タイルの白、布の白、こうして素材の良さを引き出すために、そして全体の調和をつくるために白の色をつかっていうのです。新しい建物であるのに、あえて古い素材を使ったり、手の痕跡を残した風合いをつくりだしているのです。

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前回は「背景の色を意識してみる」ということを書きました。暮らしの色とは調和をたもちながら、いつまでもあきのこない空間であること、そして長く使える背景であることなのかも知れません。
そして今回は素材を意識してみる事。覆い隠すように塗るのでなく、素材の持ち味を引き出すように色を使う事を提案してみたいと思います。
素材を見せる、または感じさせる事で、素材の持っている時間の堆積や風化していくまでの時間の移り変わりを感じる事もできるでしょう、古くなるほどに美しくなる。そのために素材の痕跡を残していく、完全に仕上げないという色の使い方もありそうです。

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