ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

カラートーク vol.06 フラワーアーティスト 密林東京/スズキアキコさん

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vol.06

フラワーアーティスト

密林東京/
スズキアキコさん
Mitsurin Tokyo / Akiko Suzuki

「色」を専門的に扱うクリエイターの方々の、「色」に対する考え方やこだわり、実践しているアイデアをご紹介するインタビューコーナーCOLOR TALK。 もっと自由に楽しく「色」を扱うためのヒントが満載です。
Vol.6は、植物や花で空間を装飾したり、ブーケやアレンジメントをはもちろん、アクセサリーなどの小物までも植物でつくる、フラワーアーティストの密林東京/スズキアキコさんにお話を伺いました。

スズキアキコさんの自宅兼アトリエは、密林東京の名にふさわしい、植物のパワーを感じる場所でした。
楽しそうに日課の水やりをしているところが、とても幸せそうに見え、本当に植物が好きなことが伝わってきました。
まずは、自己紹介とあわせてお仕事内容のご紹介をしていただきました。

スズキアキコさん:
密林東京のスズキアキコです。フラワーアーティストとして活動しています。
装飾の現場に出向いて施工や作業をしたりもしますが、基本的には早稲田と東高円寺のアトリエを拠点に活動しています。
仕事の内容は、植物を使ったことであればなんでもやっています。商業施設やウェディングの空間を植物で装飾したり、ブーケやアレンジメント、アクセサリーのような小物も作ったり、お店のための観葉植物を選んだりなど様々です。
花屋のようなものですが、お店を持っておらずオーダーを受けて制作しています。
趣味は、旅行に行くことです。驚かれたり、羨ましがられたりするのですが、毎年2ヶ月間ほどまとめて休みを取って海外へ行っています。仕事をするつもりではなくても、植物の色とその土地や気候、文化などの関係性がいつも気になってしまい、無意識に見てしまっています(笑)

他の多くのクリエーターさんと違い、スズキさんの素材とされる植物は自然の色なので、なかなかコントロールが難しいのかなと思います。何か色の使い方で気をつけていることはありますか?

スズキアキコさん:
お花の色って、同じ品種だとしても生産時期や、作る人、場所によって結構違いがあるんです。
印刷の色見本みたいに◯○の何番というように決められないので、絶妙な色バランスを求められるお仕事の場合は、発注する前に、自分の目で仕入れる植物を見て、印象を合わせながら素材を揃えることが多いです。
普段の仕事の進め方も、デザインを組み立ててから植物を選ぶというよりも、素材となる植物を見ながら組み立てていっています。なので市場に行くまで自分の中でもイメージがボヤッとしていることが多いです。
そんな時でも市場に到着すると、植物の色や形がどうしたらいいかを全部教えてくれる感じがします。

植物が全部教えてくれるっていう感覚がとても素敵ですね。植物に対しての信頼感や愛がないと湧き出てこない感情だと思います。フラワーアーティストとして、植物の色を活かすためのマイルールやポリシーがあれば教えてください。

スズキアキコさん:
ルールをつくらないことがルールです(笑)無意識的にあるのかもしれないんですが…。
植物の色は、同じ品種でも一定ではないことが多く、いい意味でも悪い意味でも裏切られることが多いです。
その時の見た色の印象を大切にして、よほど仕事として制限がない限り、直感的に色を選んでいくようにしています。
もちろん最低限のオーダーは守っていますけどね。

スズキさんにとって一言でいうと植物の「色」ってどのような存在なのでしょうか?

スズキアキコさん:
不思議な存在です。
植物は生きるためにその色になっています。花とかは、自分の花粉を媒介してくれる虫に近寄ってきてもらうために、その色になったりしてるはずです。でも、うっかり人間も魅了されてしまう…。植物の色や模様、グラデーションは本当に綺麗すぎて、何がどうなってこうなるんだろうと不思議でいっぱいになります。感動してます、毎日。

確かに自然の色は、どうやっても再現することが難しく、はかりしれない魅力がある存在だと思いました。
実際のお仕事を通じて、それらの「色」との向き合い方を紹介してもらいました。

スズキアキコさん:
これは、自主的な作品撮り用の作品です。
頭に対して何か作るということと、その時その山に生えているものだけを使って制作するということのみを決めていました。
その山に行く道すがら、内房線から見える緑の山の中に綺麗な淡い紫が現れてきて、「あ!藤がある!」と思ってデザインを組み立て始めました。
お昼頃、藤を取りにいくと、大量の熊蜂が藤の花のところにきていました。藤に惹かれたのは私だけじゃなかったようです。
次の日、蜂の寝ている朝方に取りにいきました。
こういう経験を通じて、植物の持つ色や香りなどの本来の姿を知れることが、とても面白いです。人間よりはるかに長く生きている植物からいろんなことを学ばせてもらっています。
スズキアキコさん:
ウェディングのブーケは個人的に、作っていて一番楽しいお仕事です。
沢山の微妙に違う色を混ぜ込んでいける楽しさがあります。
この写真の時は、初夏のアウトドアでのパーティでした。緑が鬱蒼とした周辺の環境と、新婦さんのハッキリとした奇麗な顔立ちを活かし、ビビッドな色合いを意識しました。ただ、ビビッド過ぎて下品にならないように、一輪の中にグラデーションのあるものや、少しくすんだ色の紫陽花を加えたり、葉っぱの質感などもカサカサした雰囲気のものにするなどして全体を調整しました。色だけでなく、植物独特の質感やサイズ、花持ちや花の持つ印象なども考慮しつつ、直感を織り交ぜてつくっていきます。

どのお仕事も植物が全体を引き立てつつ、同時に強い存在感を放っており、絶妙なバランスを感じます。
表面的な色だけでなく、植物そのもののルーツなどまで意識されているからこそ成せる技なのだと、すごく納得できました。普段の生活の中でも色について工夫したり、実践されていることはありますか?

スズキアキコさん:
旅行中でも近所の散歩中でも同じように、日々の観察を大切にしています。
同じ緑ひとつとっても、気候によって色の感じ方が全然違うし、それが“〜っぽい”に繋がることが多いと思うので、お仕事でその感覚を再現するためにも観察は欠かせません。

植物の無限の色にはかないませんが、ROOMBLOOMでは、さまざまな雰囲気に対応できるように、189色の豊富なカラーを準備しています。スズキさんの生活の中でペイントして色を塗り替えたい場所はありますか?

スズキアキコさん:
アトリエの建物が古い一軒家で、あまりにも渋い見た目なので、柱や梁部分にちょっと元気でPOPな印象を取り入れたいなと思っていました。家の周りが植物のグリーンだらけなので、補色の赤っぽい色と悩みましたが、いっそのことグリーンで全て統一したいなと思い、RB-05GY41 green marketを選びました。名前もそのまんまなのが気に入りました。

自分で山に出向き、熊蜂と出会うエピソードなどからもわかるように、植物を心から楽しんでおり、そのルーツまでも取り込んでいるからこそ、植物のイキイキとした色を引き出せて、魅力的な使い方ができているのだと思いました。
普段の生活の中での壁やインテリアの色は表面的なものだと捉え考えがちですが、スズキさんが植物に対してするように、その色の持つ意味や雰囲気だったり、そこから感じる気持ちなども含めて考えるようにすると、暮らしの中での色使いがもっとイキイキとした楽しいものにできるはずです。

フラワーアーティスト

密林東京/スズキアキコさん
Mitsurin Tokyo / Akiko Suzuki

香川県高松市生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。
卒業後、某大手老舗花屋に就職。店舗にての勤務、ウェディングゲストハウスにて婚礼の装花など。型にはまらずに植物を使いたいという思いから、退職後、完全なオーダーメイドによる制作を始める。絵の具で絵を描くように、自由に制作をおこなっている。
2013年秋、密林東京を発足。ウェディング、ライブデコレーションや、商業施設などの空間づくりから、アレンジメントやアクセサリーなど小さな物までオーダーメイドで制作している。
http://mitsurintokyo.com