―ペインティングで学園を変えよう！
色鮮やかなスライドを映し出しながら、丁寧に手話で説明していく職員の森本さん。その説明を、食い入るように見つめるこどもたち。

ここ金町学園は、聴覚障がいのある子どもたちが生活している福祉型障がい児入所施設。
小学校～高校生までの男女28名が、ここで生活をしながら都内のろう学校で学んでいます。2006年に障害者自立福祉法(現「障害者総合支援法」)の成立により、今では全国から集まった子どもたちがここ金町学園で生活しています。現在、聴覚障がい児童だけが生活している福祉型障がい児入所施設は、全国では金町学園だけだといいます。

1964年に建てられた学園の建物は、改修はしてきたものの、老朽化が目立つようになってきていました。居住空間ということもあり、明るくしたいとの思いが以前からありましたがなかなか実現できずにいたそうです。そんな時Happy Wall Projectの話をきき、プロの職人にお任せするのではなく、自分たちでペイントすることができる活動で、かつ学園の運営方針にも合致するということで応募されました。

「聴覚障がいは、障がいのなかでも見過ごされがちなんですよ。目が見えない人には、たとえば盲導犬だったり、点字などが街のなかに今はもう当たり前にありますよね。聴覚障がいに対しては、そういう配慮はまだまだ不足しています。なので、もっと聴覚障がいのことについて知ってほしい。今回この活動に参加しようと思った理由には、そういう想いもあります。」学園長が教えてくれました。

塗りたいところはたくさんある。だけど今回はそのなかでも、玄関から食堂につながる廊下をペイントする場所に選びました。理由は、こどもたちが日常生活で使用する廊下で、外来者も多く利用する場所だから。
「必ず毎日こどもたちが通るので、みんなで塗るには一番いい場所だと思いました。」と森本さん。

子どもたちが自主的に、という学園長や職員さんの想いもあり、普段からまとめ役を担っている学習委員会のみんなが中心となって、今回ペイントする色と実行の段取りを決めました。「ペイントする色はたくさんあって迷ったけど、シェアハウスのイメージで選びました」とこどもたちが教えてくれました。全国から集まっているみんなとの集団生活＝シェアハウスとイメージしたとのこと。

人と人とのつながりが存在するイメージで選ばれた色は、ぬくもりが感じられるあたたかくやさしい色。使いたい色がたくさんあったので、ツートーンで塗り分けることにしました。

ツートーンで塗り分けられ仕上がった壁をみて、学園長も職員さんも雰囲気が明るくなったと笑みがこぼれます。

片づけを終え、食堂に集まりこどもたちが初めてしたペイントした感想を教えてくれました。
「廊下がきれいになった。楽しかった！」「雰囲気が明るくなった。この行事を通じてみんなとの仲がより深まったと思う。」

最後に、暑い中がんばったみんなに、職員さんからキンキンに冷えたアイスのプレゼント。
すぐさま好きな味をめぐっての争奪戦開始。

「わたしたちがやりなさいとお尻を叩いてやらせるのではなく、子どもたち自ら自主的に行動してほしい。それでないと意味がないんです。社会にでる前に、ひとつでもいろんなことを経験させて、自分が何が好きなのか、自分には何が合っているのかいろんな気づきを与えてあげられるような機会を今後もつくりたいと思っています。」とアイスを食べる子どもたちを笑顔で見ながら学園長はいいます。

ペイントが少しはみ出しても、ムラになっているところがあっても、そんなの大した問題じゃない。大切なことは、普段自分たちが生活している場所を、みんなで考え手をいれたこと。

「児童が協力しあいながら、とても熱心に作業する姿に感激しました。」
職員さんたちにもこどもたちの新たな成長を感じることができた機会になったようです。
自分たちの生活する場を変えていこう、きれいにしていこうという気持ちがこどもたちにも芽生えたのではないでしょうか。

今回時間の関係でペイントできなかった部分は、後日こどもたちのペイント熱が冷めやらぬうちにまたやりますと約束してくれました。
ペインティングで学園を変えよう！計画はまだ続きます。

実施日	2015年7月12日
実施施設	東京都葛飾区 金町学園
関係者（団体）名	葛飾区
参加人数	23名（大人6名/子供16名）
色・壁面積	RB-05YR36 origin RB-25YR18 sweet sour RB-05Y34 pancake RB-05Y25 milk shake RB-10Y09 curiosity