ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

ペイントで、生活に人の手のぬくもりを~渡部さんの場合

ペイントがもたらす変化は、部屋の見た目だけではありません。
「誰のために、何のために、どんな空間にしたいのか。」
お部屋のインテリアについて考えるとき、ふと、そんな疑問に思いをめぐらせることがあります。
空間を作ることは、自分の暮らしを見つめること。
そうして見つめた住まい手一人一人の想いが、その場所に溶け込んでいくのです。

「幼いわが子が、これからこの部屋ですこやかに育っていきますように」と、リビングルームに“quiet room”を選んだご家族。
「今まであまり使っていなかった部屋を、ふたりでくつろげる空間にしたい」と、“breakfast”を選んだご夫婦。

ペイントで変わるのは「自分の暮らし」なのだと、私たちは考えています。
私たちの名前にある“BLOOM”という言葉には、人生の輝かしさを表す意味があります。輝かしさとは、様々な変化からもたらされるもの。
ここでは、ROOMBLOOMを通して見つけた十人十色の変化をお伝えしていきます。

ペイントで、生活に人の手のぬくもりを~渡部さんの場合

  • 猫とペイント
  • 二人

「少しくらい不便でも居心地のよい暮らしをしたいと思いました」。
駅からは車で25分ほど離れているものの、海までは徒歩5分。自然豊かな神奈川県の葉山町に移り住んだ、渡部さんご夫婦。
丁寧な暮らしづくりをする2人のライフスタイル、コミュニティ、空間づくりについて、特別にムービーと共にお届けします。

ムービーはこちらのリンクからご覧ください - a life story of Mr. & Mrs. Watanabe-

■東京から葉山へ

元々東京で会社勤めをしていたという渡部さんご夫婦。毎日のように帰りが遅く、疲れて帰って来ては、ご飯を食べて寝る、それを繰り返す暮らしだったと言います。近所の人と会っても頭を下げて少し挨拶をする程度で、そもそも名前も知らない関係。「今振り返れば余裕がなかったんですね」と、少し懐かしむようにお話されました。

そんな暮らしを変えようと思ったのは、葉山に少しずつ足を運ぶ機会が増えたある時、自分達の明らかな心の変化を感じ取ったからでした。

「心がほっとしたんです」。奥様は顔をほころばせます。近所の人と当たり前のように挨拶をし、近所付き合いが徐々に増え、町全体の空気自体も澄んでいる。言葉では表しきれない魅力に包みこまれ、ここにいることで、自分が安定していることを感じたといいます。「会社時代の友人に会うと、人が変わったと言われるんですよ」と、旦那様は少し照れくさそうに話してくださいました。「今はどんなに忙しくてものんびりする時間は作るようにしています。そのためにこの土地を選んだし、そのための家づくりをしています」。決して便利ではない場所であるにも関わらず、自分達らしい暮らしができる今に、心から満足している様子がうかがえました。その中でも、「やっぱり近所づきあいが増えたことが嬉しいことの一つですね」そう話す理由を尋ねると、もともと人が好きなんです、とのこと。昔から2人ともご実家が商売をしていたから、常に誰かが周りにいて、話し声が絶えない環境が当たり前であり、好きになったのだと思う、と答えてくださいました。

せっかく移り住むのならば、みんなが集まりやすいおしゃべりができるコミュニティースペースを作りたいと、今の家をつくることを決めたそうです。一体どのようなスペースなのでしょうか?

■空間とコミュニティ

元々はパン屋さんだったという中古住宅。自分達でカウンターを作ったり、床板を貼ったり、二人で徐々に手を加えていきました。
間取りで特徴的なのは一階部分にある大きな土間スペースです。ガラス張りで外に開かれた場所は、リビングスペースやワークショップスペースなど、集まる人に応じていくつもの顔みせる、そこに集う人のための場所になっています。また、そこでこだわったのは間取りだけではありませんでした。

「地域の人たちが主体となって繋がっていけるような空間を目指しているので、カラーリングにも気を配りました」。
昔からデザイン関係の仕事をしていることもあり、かつては空間にもいかにオリジナリティを出すかを第一に考えていたといいます。ところが今は自分たちの存在は後ろに置くようにしている、教えてくれました。自分たちの空間であってもそこに来る人たちが主役で自分達はそれを支えている。その考えは、空間やモノに対しても同じく「たとえば白木は白木のままだったり、植木鉢は土の色だったり「素」の色合いを大切にしています。」

今回ペイントした色は混じりけのない真っ白の「pure white(ピュアホワイト)」。みんなが集まる場所は、敢えて空間にオリジナリティを出さず、自然でピュアな環境にするからこそ、それぞれの人の個性が際立つ、一人一人が主役になれる空間になりました。
そして、実際にペイントしたのは奥様。なんと一戸建てのすべてをペイントしたといいます。一体どんな想いで大面積をペイントしたのでしょうか。

■ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

来てくれた人たちに気持ちよく過ごしてほしい、そんな想いが根底にある渡部さんご夫婦は、カラーリングにも気を配りました。選んだのは“pure white(ピュアホワイト)”。真っ白な色を取り入れたことで、天井から隅々まで、清潔感あふれる空間に仕上がっています。

今回、大きな面積をペイントしたことで、内装に対する感覚が研ぎ澄まされていったと、奥さまは振り返ります。最後まで自分の腕で仕上げるからこそ、メンテナンスの仕方が自然と身に付く。少しのムラが「良い味となる感覚」がわかってくる。「ペイントって失敗してもその上からまた塗れるから、何度でも修正がきくし、自分の想い描いた形を作り易いツールですよね。」

仕上がりについては、「部屋の隅々まで白いペンキを塗った事でパァっと明るくなりました。」間取りや採光を考えたり、電気配置を変えたりしなくても、自分がローラーを動かすたびに空間がどんどん明るくなる。その感覚に、心まですーっとしたと言います。

「止まっていた空気が動きだしたのをはっきり感じました。なんだか生き返ったような感じで、風が通った、っていうのかな。。モノが部屋に馴染んで、命を得るような感覚かな。」

モノが命を得るような感覚。お部屋を丁寧に自分たちで作りあげた渡部さんだからこそ、こぼれた一言でした。

日本の住宅には様々な素材が使われ、それぞれ経年劣化の具合は異なります。汚れにくいものとそうでないものとの差が生まれる。汚れたものを新しいものに取り変えても、今度は他の汚れが目立つ。なんとなく違和感を感じながらもそれらから目を逸らして暮らす住まいは、心から居心地のよい空間といえるでしょうか?

渡部さんの空間もかつてはそんなちぐはぐな印象でしたが、たった一枚重ねたペイントが、空間の統一感やモノが新しく生き返ったような感覚を与えてくれたのです。さらに、植木鉢や木箱などの小物まで合わせてペイントすることで、スッキリとした空間を作っています。

「ペイントはリノベーションを楽に進めてくれる、パワフルなツールですよね。」家全体のリノベーションをデザインしていたご主人も、奥さまの語るペイントの魅力にうなずきます。

■暮らしに、手をかけるということ

「ペイントや手作りの良さは、生活に人の手のぬくもりが入るところですね。」

日頃からニットデザインなど手を動かすことに慣れている奥様は、手作りの良さを「手のぬくもり」と表現されます。画一的な工業製品にはない、包み込むような暖かい心地良さ。そしてその暖かみは小物だけでなく、住まい全体でも表現できることがわかったそうです。

「誰かにお願いしてしまえば、すぐに終わるし、そんな手間をかけて時間がもったいない。」

ひょっとすると、そう思われる方もいるかもしれません。

しかし、「自分で考え、手を動かすことで、愛着が湧いて、より自分らしい生活ができる。そんなここでの暮らしが何より楽しいんです。」飼っている三匹の子猫と遊びながら、ご夫婦は自然な笑顔で語ります。自分達にとって何が大切なものなのか。あふれるモノの中からそれを明確にするのはとても大変なことです。それでも、自分達らしい道を考え、選択をしてきた二人は心から楽しそうに話していました。

「実はこの猫たち、施設から預かった子なんです。ワクチン接種なんかがたくさんあって大変だったし、来た当初はとても小さくて心配したんですけどね。今は元気すぎて困ってるくらい。」病気の面影などみじんも感じさせず、元気にのんびりと暮らしているこの子猫たちの姿こそが、渡部さんのここでの暮らしの豊かさを、なにより雄弁に物語ってくれています。

「二人とも、今の暮らしが気に入っています。」

動画の最後に込められた、この一言。それを肩ひじを張らずに言えること、それが、これからの暮らし方なのかもしれません。

  • 葉山東京から葉山へ移り住んだ渡部さん夫妻
  • のんびりする時間「のんびりする時間を作るようにしています」と猫たちと遊ぶ奥様
  • コミュニティ地域の自然に人々が集まり、会話が生まれる場所に
  • 作品たちニットやアクセサリーのデザイン制作を行う奥様。旦那様が集めた鉢植えもとてもかわいらしい。
  • コミュニティスペース道路側から覗きたくなるコミュニティスペース
  • コミュニティスペース2人が主役となるよう、天井まで真っ白にペイント
  • 1_ペイント後姿一戸建てを丸ごと真っ白にペイント。心まですーっとした、という奥様
  • 2_素材の違うもの同士違う素材もペイントすることで統一感が生まれる。「ペイントはパワフルなツール」という旦那様。
  • 3_小物を塗る暗かったモノが明るくなる。それはまるでモノが命を得るような感覚だという。
  • 4_猫元気にじゃれる渡部さんご夫婦と共に、今は元気に暮らす子猫たち
  • 5_夫婦で楽しい暮らし肩ひじを張らずに、自分たちらしい暮らしを丁寧に楽しむ
  • 6_LIFEwithRB