ROOMBLOOM

ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

カラートーク vol.02 プリンティングディレクター 高 智之さん

前のページへ戻る

vol.02

プリンティングディレクター

高 智之さん
Tomoyuki Taka

「色」を専門的に扱うクリエイターの方々の、「色」に対する考え方やこだわり、実践しているアイデアをご紹介するインタビューコーナーCOLOR TALK。 もっと自由に楽しく「色」を扱うためのヒントが満載です。
Vol.2は、デザイナーからの信頼がとても厚い、総合印刷会社「株式会社山田写真製版所」でプリンティングディレクターをされている高 智之さんにお話を伺いました。

富山だけに留まらず、全国を飛び回りながらお仕事をされ、幅広い交友関係をお持ちの高さん。まずは、簡単に自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか?

高さん:
富山県にある「株式会社山田写真製版所」という印刷会社でプリンティングディレクターという仕事をしています。
印刷自体は富山の工場で行うのですが、デザイナーとの打ち合わせなどで東京やその他の地方に出張する事も多いです。常に自然体のコミュニケーションをモットーにしております。趣味は音楽、美術、映画などもっぱら鑑賞派で見て楽しいものが好きです。

印刷会社の中に、プリンティングディレクターという職業があることを知りませんでした。
プリンティングディレクターって具体的にどのようなお仕事をされるのでしょうか?

高さん:
確かに、耳慣れない職業だと思います。おもにクライアントと印刷現場の間に立ち、よい印刷物を作り上げるのが仕事です。印刷物というのは世間では画一的な商品ととらえがちですが、良いものと粗雑なものが確実にあります。
弊社にはQUALITY FIRSTという信念があって高品質な印刷に取り組んでいます。
当然、デザイナー、写真家、ディレクターなどクリエイティブでこだわりをもったお仕事の方々とのコミュニケーションが多くなり、必然的に品質のハードルも高くなります。
そういう中で単にコストをかけるだけではなく、予算などを加味した効果的な提案をする。
美術館に出かけて行き本物と見比べながら色の校正をする。または印刷現場で色調を検査し、品質の判断を下す。
おもにそんなお仕事です。クライアントが「いい印刷物だねー。」と喜んでいただければプリンティングディレクターは至福であると思います。

単純に印刷すると言っても、とても奥が深いのだなということがヒシヒシと伝わってきました。そんな印刷品質の中核を担うプリンティングディレクターの高さんならではの「色」にまつわるエピソードをお話頂きました。

高さん:
印刷技術の場合、ほとんどが4つのインクで刷り上げるというのが大きな特徴です。
藍(シアン)赤紫(マゼンタ)黄(イエロー)墨(ブラック)この4つのインクで世の中の印刷物のほとんどが刷り上げられています。網点(ドット)という小さな点で再現されているのですが、その大きさの比率で色が再現されています。
どんな複雑な色でもこの4つのインクの掛け合わせってことですね。
赤い林檎ならC10%M100%Y90%K10%という具合に4つのインクを掛け合わせて色が再現されます。
駆け出しの頃は人より技術を上げたくて見るものすべてを%で表現出来るよう訓練してました。
「今日の空はC50%M20%ぐらいだなー。」って感じで(笑)

絶対音感ならぬ、絶対色感のような能力をお持ちなのですね(笑)。色を扱う際に心がけていることはありますか?

高さん:
例えば真っ赤な漆の器を見た場合、ひとつの色で塗られたものであっても、必ず器の形を見せる影があります。印刷の場合はその影が大事。影による色の違いを表現しながら本物と同じような色に見せる。印刷業界には色調という言葉がスタンダードで、これは色と調子はふたつでひとつってことなんですね。色は単にそのものが持つ色だけでなく陰影を含めたトータルバランスで考えなければなりません。これもこの仕事の面白い所だと思います。

プリンティングディレクターである高さんにとって、「色」とはどんな存在なのかをお聞きしました。

高さん:
私にとって色は「届かなくても追いかけるもの」ですね。
私たちの印刷業界にとって色というものは基本4色しかない。しかし、4色で再現するというのは科学的には無理があって、現在では液晶テレビからスマホにいたるまでRGBの再現域にも勝てない状況です。
でも、印刷された写真集や図録には液晶画面にはない魅力がある。決して諦めたことはありません。

印刷の現場で、更に深く突っ込んで色の考え方やこだわりをご紹介頂きました。


高さん:
基本的には4つの色しかないとは言ったんですが、印刷には特色というインクがあります。
代表的なものは金銀などの光るインク、または蛍光色などの浮き上がるような色彩のものなどです。これらは通常の4色インクでは再現出来ないものを特別に作ると言う意味合いですね。この特色という色をうまく使うことによって印刷物をより効果的に見せることができるわけです。
5色刷、6色刷….と10色刷まで弊社にはノウハウがあります。印刷物に付加価値を与えるわけです。
この写真は富山にある美術館で行なわれた企画展の一連の作品です。全面に銀の特色を刷り、その上から通常の4色インクを刷っています。何となく不思議な世界を表現していて私はこのポスターや図録をとても気に入っています。
高さん:
印刷物は刷り重ねによって色を表現しています。ゆえにどう重ねるかは最初の印刷設計に重点があります。
この印刷物のような銀のインクの上にインクを乗せるのは印刷設計としては珍しいタイプでデザイナーや制作者の方には事前に詳しく相談しました。プリンティングディレクターが持つ技術の引き出しが重要視される過程で、この打ち合わせがうまくいかないとデザイナーのイメージ通りのものが仕上がりません。また、印刷工程に関しては安全とリスクが同時に思いつくようでないとうまくはいきません。効果的な部分も説明しますが、こういう問題があるとあらかじめマネジメントすることも伝えます。この仕事に関してはとても複雑な工夫をこらしましたが、関係者の方々には高く評価していただきました。

ここまでこだわって印刷されたポスターなどであれば、掲出される場所の壁色や光なども意識されるのでしょうか?

高さん:
例えば室内で作られたポスターでも貼られるのは屋外だったりします。
そうすると同じポスターでも見え方が違ってくるので環境は意識せざるを得ません。
色の判断にはしっかりとした基準が必要なので、色を見る時は必ず色評価用蛍光灯のもとで確認します。
でも、印刷物を納品する環境は普通色評価用蛍光灯なんて使用してないですよね。そういうギャップとの戦いはあります。
どうしても判断に迷ったら、実際に屋外にポスターを持っていって判断したりすることもあります。

お話を伺えば伺う程に、色に対してここまで深く考える仕事があったのか…と改めて驚いています。
印刷自体ではなく、ワークスペースやご自宅で「色」を意識的に使われていることってありますか?

高さん:
職場である印刷現場は防音壁に囲まれた、わりと殺風景な感じなのですが、清潔感が欲しいなと常に思っています。インクなどがつきやすい汚れがちな現場なのですが、それゆえになおさら壁色の選択も大事かなと。弊社も手狭になった現工場から広い場所に移転する計画があります。よりクリーンな色合いのペンキで壁を塗ってみたいですね。

ROOMBLOOMでは189色の豊富なカラーがあります。移転の際に使ってみたいと思われるクリーンな「色」はありますか?

高さん:
ROOMBLOOMの色見本帳を見てるとたくさん色があってワクワクしますねー。
色を正確に評価するには定石があって、こういった職場では強い有彩色は好まれません。赤い壁の部屋にしばらくいたら、白い紙がうっすら緑色に見えるはずです。人間の色補正能力ですね。そういったことがないよう薄いグレーがいいかなと。RB-NN04 cloudy morningとかRB-DM12 mirageが良さそうですね。
特に富山は蜃気楼の街があるのでmirageなんていい名前だなと思いました。

色を扱う際に特に意識されるとおっしゃっていた「そのものの色だけでなく、陰影を含めたトータルバランス」で考えること。
これはそのまま住宅の壁面にもあてはまる話だと思いました。見本帳での印象よりも実際に塗ると、なんだか思ってたイメージと違うということは良く耳にする話です。印刷のプロの考え方に習い、太陽光や照明の種類などの陰影に関わる部分を住環境においても意識することで、暮らしの中にイメージ通りの色を取り入れられるようになりそうですね。

プリンティングディレクター

高 智之さん
Tomoyuki Taka

1983年に写真関係の大学を卒業し、山田写真製版所東京本部に入社。以来15年東京で画像色調関係の部署で勤務。
当時は製版会社だったので印刷の前工程を受け持っていました。1998年富山本社勤務。
この頃から弊社は製版業から印刷業に業態を変え、2011年からプリンティングディレクターとして仕事をしています。
製版業時代のノウハウを活かし、印刷設計を綿密に行なうのが自分のスタイルだと考えています。
今後も人の心を動かすような印刷物を作りたいです。