ROOMBLOOM

ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

HAPPY WALL PROJECT

みんなで受け継いでいくまちのお茶の間 ~地域共生のいえ『岡さんのいえTOMO』~

「この家を私のこどもだと思って、地域やこどもたちに役立てて」。

これは戦後、駆け出しのキャリアウーマンとして生きていたとある女性の遺言です。
彼女の名前は岡さん。世田谷区上北沢3丁目にある築70年、前庭と縁側が特徴的な昭和の面影を残す民家「岡さんのいえTOMO」の元の持ち主です。
現在この家のオーナーは、岡さんの遠い親戚である小池さんです。かつて岡さんはこの家でお友達と暮らし、また子どもたちに英語やピアノを教えていました。岡さんの亡き後、静かになってしまったこの場所をもう一度子どもたちの声が響く家にしたいと、小池さんは冒頭の岡さんの遺言に突き動かされるようにしてここを引き継ぐ決心をされたといいます。2007年のことです。

写真①

丁度その時期、財団世田谷区トラストまちづくりが市民大学を開校していました。小池さんはその一期生に対し、岡さんの家をどのように地域に開いたらよいかをフィールドワークの一環として考えてもらうことにしました。
その後、オーナーの小池さんと運営スタッフを見守り隊員と名付けて活動を始め、多世代交流の「まちのお茶の間」として「岡さんのいえTOMO」はリスタートをきったのです。

お茶とおしゃべりを楽しむ「開いてるデーカフェ」、小学生が集う「駄菓子屋」、小さなこどもたちの声が響く「まったりサロン」。季節毎のイベントも開催し、いつもにぎわいをみせている地域に根付いた場所。
オープンしてから気づけば8年の時が過ぎました。

写真②写真③

築70年のこの家も地域の人たちにより一層安心して使ってもらうため耐震補強や台所等の設備の更新が必要になってきました。
地域共生のいえの支援元である財団世田谷区トラストまちづくりに相談したところ、建築士事務所協会世田谷支部地域貢献チームの協力ももらいながら、耐震補強とキッチン改修に取り組むことに。どのような内装設計がいいのか、どのような空間にしたら利用者やスタッフが居心地よく過ごせるのか。何度もオーナー、見守り隊員、建築士・設計士チーム、トラストまちづくりのみなさんでアイデアを出し合い納得がいくまで話し合ったそうです。
改修にかかる工事費用は、クラウドファウンディングで集めることにしました。そして、費用を抑え、かつ愛着をもって利用者に使ってもらいたいという想いから、耐震構造壁の内装仕上げは手づくり施工をすることにしたのです。Happy Wall Projectの始まりでした。

写真④

ペイント当日は、25人ものひとたちが集まり大賑わい。キッチン周りは少し黄身がかったやさしい色「sand castle」を選びました。なかでも一番盛り上がりを見せたのは、トイレ前の壁を「green market」で塗った上から行ったこどもたちの手形ペイント。大人たちが少しひやひやしてしまうほど手をペンキまみれにして笑顔で大胆に手形をつけていく子どもたち。そのこどもたちをみて、大人たちも自然と顔がほころびました。「トイレの前は楽しい感じにしたい」というオーナー小池さんの希望どおり、トイレに入る人が思わずハッとする、そんな個性的な壁ができあがりました。

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今回の改修のポイントは、耐震補強のほかに、オーナー小池さんには二つの想いがありました。ひとつは毎週水曜日に行っている「開いているデーカフェ」をオープン当初からやってみてここは「みんなで作って、みんなで食べる」場が似合うこと、そのために閉じていたキッチンの壁を取り、開放的にしたい。そしてもうひとつは、岡さんのいえTOMOを新しくなったキッチンをコアにした利用者が増えてくれればうれしい。皆が安心して使える居心地のいい空間にしたい、そう思われたのです。

改修工事完了後、新しくなった岡さんのいえにROOMBLOOMスタッフがお邪魔しました。
その日は水曜日。「開いているデーカフェ」の日です。
小さいお子さんをもつ親子が何組もご近所から集まっていました。テーブルを囲んで座りながら、みなさん楽しくお話しをされています。以前まであったキッチンと居間の壁はとり払われ、オープンキッチンになっています。「オープンになった分、作り手と受け手の顔が実際に見えてコミュニケーションがとりやすくなりました」と話す小池さんの表情はとてもうれしそうです。

写真⑦写真⑧

地域の方に、岡さんのいえのことを伺ってみました。

「ここは普通のカフェやお店とは違って、普通の家。外のお店だと、周りの人に気を遣ってしまうけど、ここは大丈夫。子どもたちだけで遊んでも安心だし、学生さんや見守り隊のみなさんがこどもの遊び相手になってくれることもあるので、子育てを少し休憩できるんです。」

どのお母さんたちにも「岡さんのいえTOMO」は、ほっとできる場所のようです。
改修後の岡さんのいえについては「以前より明るく、きれいになった!」「子どもの手形が壁にあるのでなんだか嬉しいし、和みます」と大好評でした。

写真⑨

地域共生のスペースとして8年前に歩みはじめた「岡さんのいえTOMO」。その活動や取り組みは、オーナーの小池さんやメディアを通して今や全国に知れわたっています。中には海外から見学に訪れる方々もいるほど。この場所がそこまで注目を集めているのは、オーナーである小池さんの熱意や想いはもちろんのこと、見守り隊員のみなさん、地域共生のいえを支援している世田谷まちづくりトラストのみなさん、地域のみなさん、ボランティアできている学生さん、多くの方々の並々ならぬ愛情がこの家に注がれているからでしょう。まちづくり大学の一期生の何名かが今も見守り隊員としてこの場所を支えてくれていることが、それを物語っています(中には、子どもの頃岡さんに英語を教えてもらっていたメンバーもいるのです!)。地域のみんなで受け継いでいくこの場所は、これからもずっと「まちのお茶の間」として愛され続けることでしょう。

実施日 2015年11月14日
実施施設 東京都世田谷区
岡さんのいえTOMO
関係者(団体)名 岡さんのいえTOMO
一般財団法人 世田谷トラストまちづくり
参加人数 25名
色・壁面積 RB-05Y26 sand castle
RB-05GY41 green market
RB-DM25 camp