ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

コラム

07.たくさんの色を使う

07.色から暮らしを考える ~たくさんの色を使う

Chest of Drawers by Tejo Remy (1960), part of the Droog Design Collection
Creative Commons — Attribution 2.0 Generic — CC BY 2.0

色を調和させていくのに、たくさんの色を混ぜ合わせることで調和させるという方法があります。少しだけの色を無秩序に入れてしまうと、その組み合わせが難しいのですが、あえてたくさんの色を少し小さな単位で全体に散りばめることで、それぞれが激しい色であっても全体としてひとつの調和を生み出すのです。こうした考え方は、1990年代のオランダのダッチデザインと言われる実験的なデザイン運動から生まれたとも言えます。

ダッチデザインとは広義の意味ではオランダのデザインすべてをさすこともありますが、一般には1990年代に生まれた先進的なデザイン運動=コンセプチュアルデザインといわれる運動のことをも意味します。それはプロダクトやファッション、家具、建築のデザインの分野でおこなわれました。20世紀初頭に生まれてからずっと続いてきた近代デザインの既成概念からどう飛び出していけるかということを積極的に行った試みとも言えます。理性的なものをもっと理性的につくる、あるいは反対にもっと感覚的につくる、といった方法をもってより新しい空間や形を追求しようしました。そうした運動の中で色使いについては特に特徴がありました。あえてひとつのものやひとつの色に、またはひとつの形に収束させていかないこと。さらに素材については、新しいものだけでなく古いものを使っていくこと、無機質になりやすい近代建築に楽しみや時間の流れを埋め込んでいくという傾向もありました。
近代デザインと言われる20年代以降のデザインは、理性的で、明解で、そして抽象的でした。人間の感性というよりは理性によって建築や空間をつくろうとする方法が世界中に伝わっていくのですが、一方でそれから約一世紀、建築と人間の感性をもっとつなげていこうと考えたのです。より楽しく、人間の感情に訴えるものが欲しいとも思い始めています。特に色についてはこだわりを捨ててもっとたくさん使っていくことや、素材をもっと楽しんでいくことにオランダのデザイナー達はアプローチしだすのです。

コンセプト

写真提供:IDÉE 撮影:Masahiro Sanbe

そのキーワードは、「部分から考えた全体の調和」とも言えます。それは自然界の色の配色がそうであるように、様々なものが混じり、重なり、全体の調和がなされていることにもつながります。こうした試みは色そのものでなく、色が啓発する暮らし方や生き方への転機となりました。

そしてこの方向性に拍車をかけるのがDIYの動きです。建築家という職能によって生み出される建築に対して、住む人が自らの感性で色や素材を使いだす動きが始まるのも新たな動きと言えます。住宅だけでなく、カフェやお店の内装でもオーナーが自ら色を塗ったり、内装を手がけたりと、少しラフでも、そこに思い思いの色を塗り、アンティークや自分の好きな家具を持ち込んでいくのです。次回はこのDIYについてもう少し考えてみようと思います。