ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

コラム

10.黒い外壁の街

10.色から暮らしを考える 〜黒い外壁の街
今回ご紹介するのは、愛知県常滑市、一時期日本の土管の最大の生産地として知られた街の家の色について。
常滑の家は、写真のようにどの家も黒く塗られています。
焼き物の釜にくべるコークスを作る時に出るタールを塗っていたのだといいます。古くは木製の板張りでしたが、中にはトタンの外壁も黒く塗られています。黒く塗る事で、その材質の違いも消えて統一感のある街並みがうまれています。民家ですので、特別に贅沢な家ではありません。どこにでもあるような家なのですが、色が統一される事で、全体として統一されるだけでなく、それぞれの窓の構成が浮き出て、その端正さが、かえって小気味いいリズムさえつくっているようにも思えます。

このコラムでは白のことについて何度か書いています。白は色ではなく、背景だと書きました。家の中をまずは白く塗ることで、白いキャンパスのように背景を整えることが出来ます。そこに、少しだけ色を加えることでその色が映えてくる、と。同じことが黒にも言えるかもしれません。黒も色ではなく、細かな線や素材の違いを消していくことができます。バラバラな素材を消していくことで、建物を風景の中に溶け込ませていくことも可能なのかもしれません。

10.色から暮らしを考える 〜黒い外壁の街

家というものに対して、少しでも他人と違う、他人より大きく立派な家をもちたいというのも思うことは自然な欲求です。しかし京都の町家のように家の素材を隣同士で合わせていきながら、小さな差異で自分の家の表情をつくっていくというのも街のあり方としてあるように思うのです。
この常滑の街の色は誰かが決めたのでなく、もっとも安価で丈夫なものとして、このタールの黒が必然的に選ばれた結果なのでしょう。

10.色から暮らしを考える 〜黒い外壁の街

今の時代、外壁に使う素材は、安価な物でもたくさんのものがあります。塗装にしても好きな色を塗ることができます。安価という理由で街の色を決めることはできませんが、街の風景を作るために、あえて外壁の色を街として決めてみんなで塗るということ、そのことで街全体が美しくなるならばそれも一つの選択肢ではないかとも考えます。

みなさんはどう思いますか。ご意見をお寄せください。