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カラートーク vol.10 クリエイティブユニット SPREADさん

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vol.10

クリエイティブユニット

SPREADさん
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「色」を専門的に扱うクリエイターの方々の、「色」に対する考え方やこだわり、実践しているアイデアをご紹介するインタビューコーナーCOLOR TALK。もっと自由に楽しく「色」を扱うためのヒントが満載です。
Vol.10は、グラフィックデザインを軸に様々な領域のデザイン・ディレクションを手がけ、アートワーク制作も行っている、国内外で活躍中のクリエイティブユニット SPREADの小林弘和さんと山田春奈さんにお話を伺いました。

プライベートでは夫婦でもある小林さんと山田さん。アトリエ兼ご自宅の建物は、閑静な住宅街の中で異彩を放っており、足を踏み入れる前から既にワクワクしてしまいます。まずは、お二人に自己紹介をしていただきました。

SPREADさん:
(山田) SPREADの山田春奈と申します。
スタッフが数名おり、国際色豊かなメンバーです。家族は娘1人と、ペットの猫が二匹おります。
オスとメスの兄弟猫で、名前はジョンとヨーコといいます。本当です(笑)。
(小林) SPREADの小林弘和です。僕らは元々大学の同級生です。
学生時代、山田は環境デザインを学んでおり、卒業後もランドスケープの事務所に入って働いていました。
僕は、視覚伝達デザイン学科で広告のデザインを学び、卒業後は広告代理店に勤めていました。
(山田) お互い違う分野をデザインで勉強して、それぞれに就職をしたのですが、計画的に独立をしようと決めていたわけではないんです。いろいろなタイミングが重なって、いつの間にか独立していたという感じです。なので最初は本当にゼロからのスタートでした。
(小林)最初はフリーランスじゃなくてフリーダム(失職)だったみたいな感じですね(笑)

お二人が違う分野のデザインを学ばれていたり、山田さんがランドスケープの事務所に勤められていたことも意外だと感じました。現在のお仕事内容についても教えていただけますか。

SPREADさん:
(山田)グラフィックデザインを軸にしながらデザインをしています。カタログ、ポスター、パッケージ、CDジャケットやロゴなどがアウトプットの一例です。あと様々な要素を統合した形でのブランディングも増えてきています。最近では、コンセプト立案から携わり、商品開発を行うこともでてきました。
これらの他にアートワークでLife Stripeというのもやっていて、その流れから、私たちの色を出してデザインして欲しいという依頼も徐々に増えてきています。

アートワークというのはお仕事というより、あくまでもっと純粋なご自身たちの作品という意味でしょうか。

SPREADさん:
(山田)クライアントさんから頼まれるものではなく自発的に作品を作っているという意味ですね。
代表的なLife Stripeという作品は、色々社会に対してメッセージを伝えていきたいという活動なので、依頼されたデザインの仕事とはやはり意味が違ってきます。
(小林)厳密に言うと、クライアントワークとアートワークの中間のような仕事もあったりします。
どれを一番やりたいみたいなことではなく、それぞれに意味を感じています。
アートワークをやる事で、自分たちのお金と時間をかけて実行するということがリアルに感じられて、普段、貴重な予算をデザインにかけていらっしゃるクライアントさんの気持ちがより解るんですよね。
クライアント側の経験を持つという意味もありますし、依頼があった仕事だけをやっていると、その状況に慣れすぎてしまって見失うこともあるのかなと考えています。

ひとつひとつのお仕事や作品は、関わる立場や、条件などが違うのはもちろんのことなのですが、
どこか根底で通ずるSPREADさんらしさを感じます。何かご自身たちで意識されていることはありますか?

SPREADさん:
(小林)自分たちで意識的にしているわけではないのですが、日本人っぽくない、ヨーロッパっぽい色の使い方だねとよく言われるんです。これは推測ですが、僕らが強い色とかはっきりした色を好むことと繋がっていて、それは新潟で過ごしていたことも影響していると思っています。長い間冬の真っ白な雪景色を見て過ごし、春の光とか色を求めて耐え忍んでいると、桜のピンク色が頭の中で濃縮されて、実際に色を表現するとハッキリとした色になっていることがありました。このような環境が北欧にもあると考えていて、それが日本人ぽくないと言われる色使いの所以かもしれません。
あとは、季節によって色が面で変わっていくのも新潟の特徴です。
土の茶色、田植え前の水に反射する空の青、田植え後の緑、豊かに実った黄色、そして稲刈りしてなにもなくなり、雪が降って真っ白になって…。このように色が大きな面で移り変わっていくのが現体験としてあるんです。
だから、色使いに加えて、色を「色面」で見ていることも僕らの特徴だと思います。
(山田)これらの色の捉え方をベースに、過去から未来に繋げるというコンセプトでデザインをしています。
土地の歴史を紐解き、それを景観のデザインに活かしていく、ランドスケープの考え方を取り入れてデザインしているという言い方もできるかもしれません。

色使いというと、生まれ持ったセンスなど感覚的な要因が強いと思われがちですが、育った環境が影響するというのは、新しい考え方に感じ、とても腑に落ちました。色の使い方について、具体的にお仕事を通じてご紹介いただいてもよろしいでしょうか。


© 「燕三条 工場「工場の祭典」の祭典」実行委員会
SPREADさん:
(小林)新潟の燕三条で開催されている「燕三条 工場の祭典」というイベントのアートディレクションとデザインのお仕事です。普段は閉じられている工場を訪れ、職人たちの手仕事を間近に見たり、参加型のワークショップも開催されました。
はじめて燕三条に行った時の印象は「赤と黒」の色が多用されていているなということです。リサーチしてみると、この2色は工場の「炎」と「鉄」を表現しているのがルーツでした。でも、それらを観察すると「赤と黒」ではなく「ピンクとシルバー」の方が実際の色に近似だったので、ふさわしい色なのでは?と感じ、このデザインを提案しました。
(山田)ビジュアルのポイントになっているストライプは、危険な所に貼ってあるトラテープからきています。工場って凄く危険なので、一般の方に開放するのでいろいろと注意してもらわないといけません。そこでストライプを使いましょうということになりました。単純に私たちがストライプ好きだからではなくて、燕三条の工場にある記憶とか歴史などを未来につなげていくことを考えた結果として導き出されたデザインです。

「Life Stripe」 ©SPREAD
SPREADさん:
(小林)これは何度か話にも登場しているLife Stripeです。1日の行動を21色のカラーに置き換え、それらを24時間の時間軸に沿って記録することから生まれる「生活の模様」です。さまざまな一日を、文字でも写真でもなく、色彩のパターンで表現するアートワークです。
アンケートリサーチから21の行動項目を導きだして、そこからさらに「『睡眠』はどのような色のイメージですか?」というようなヒアリングを各項目に対して行いました。色ってそれぞれに記憶が紐づいてると思っていて、人それぞれ違うものもありますが、共通の部分もあって、Life Stripeの場合はその共通部分を取り出している感覚です。

パッと見てインパクトのある強い色使いが、歴史や記憶などの情緒的な要素から導き出されたものだとわかり、
これがビジュアルの魅力につながっているんだろうなと感じました。これから世の中の色を見る目が少し変わりそうです。お仕事以外でも何か色について工夫されていることはありますか?

SPREADさん:
(山田)実はこのアトリエの天井と壁は色を微妙に変えてあるんです。空間の面積が広くなると壁色が明るく見えるということで、設計チームから濃いグレーを提案されました。濃いグレーでも白く感じますよと言われたんですけど、濃いグレーはどうしてもグレーに見えてしまって。納得いくまで何度も調色して、最終的に一番白く出来るグレーになりました。
(小林)作ったポスターを貼ったり、気に入ってる写真を飾ったりする時に、壁面が白ではなく、ほんの少しだけグレーなので紙の白もちゃんと見えるんです。これがただの白だったら、貼ったものと壁との境が見えなくなってしまうと思います。多少の汚れが気にならないとかも使ってみて良かったなと実感したポイントですね。

当たり前のように見てしまっていましたが、壁面の何気ないグレーが、自然と作品を引き立たせる機能も備えた色になっていることにハッとさせられました。この壁面のような細かなご要望にも応えられるように、ROOMBLOOMでは189色のカラーがあるのですが、アトリエの中で塗り替えてみたい場所はありますか?

SPREADさん:
(小林)今まさにここで使っているこのテーブルを塗り替えたいですね。
折りたたんでコンパクトになる機能性には満足していますが、前のアトリエから使い続けているので、
今の新しい環境に合わせたいです。壁面やその他の家具とのバランスを考慮し、テーブルも薄いグレーにすることで存在感を薄くし、人がニュートラルに入り込めるよな空間にできればいいなと思いました。

「色と記憶は紐づいている」という考え方から生まれた、SPREADさんのお仕事やアートワークには、過去から未来につながるメッセージがこめられていました。「ワクワクする」「背筋がのびる」「考えさせられる」など誰もが抱く感情の裏には記憶を呼び起こす色の効果もあったのかもしれません。普通に生活していると、その時の感情をあえて意識することは中々難しいかもしれませんが、まずは、目の前に何色があるのかな?と少しだけ意識してみてください。すると、自分がどんな色に反応しているか気付くきっかけになり、色の使い方でもっと暮らしを楽しく豊かにできるかもしれません。

クリエイティブユニット

SPREADさん
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小林弘和と山田春奈によるクリエイティブ・ユニット。
環境・生物・物・時間・歴史・色・文字、あらゆる記憶を取り入れ「SPREAD=広げる」を生み出す。
2017年には「国立新美術館開館10周年」記念ビジュアルのデザインを手掛ける。主な仕事に、工場見学イベント「燕三条 工場の祭典」、空間デザインツール「HARUstuck-ondesign;」、コスメブランド「Celvoke」「Forganics」、CDジャケット「相対性理論/正しい相対性理論」、ストールブランド「ITO」、「萩原精肉店」VIなど。
2004年より、生活の記録をストライプ模様で表す「LifeStripe」を発表。スパイラルガーデン(東京、2012年)、ミラノフオリサローネ(イタリア、2012年~2014年)、 Rappaz Museum(スイス、2014年)、在スイス日本国大使館(2015年)、茨城県北芸術祭(日本、2016年)などの個展を開催。
主な受賞歴にD&AD賞、reddotdesign賞、ドイツデザイン賞、Pentawards、アジアデザイン賞、グッドデザイン賞ほか。
https://spread-web.jp

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