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ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

カラートーク vol.05 インテリアデザイナー 五十嵐 久枝さん

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vol.05

インテリアデザイナー

五十嵐 久枝さん
Hisae Igarashi

「色」を専門的に扱うクリエイターの方々の、「色」に対する考え方やこだわり、実践しているアイデアをご紹介するインタビューコーナーCOLOR TALK。 もっと自由に楽しく「色」を扱うためのヒントが満載です。
Vol.5は、グッドデザイン賞の審査員を務め、武蔵野美術大学で教授として教鞭もとられている、業界を牽引する存在のインテリアデザイナー五十嵐久枝さんにお話を伺いました。

TSUMORI CHISATOやune nana coolなど名だたるブランドから、familiar PRESCHOOLなどの保育園まで、
インテリアデザインの最前線でご活躍されており、武蔵野美術大学で教授として教鞭もとられている五十嵐さん。
自己紹介とあわせてお仕事の内容をご説明いただきました。

五十嵐久枝さん:
インテリアデザイナーの五十嵐久枝です。1993年にイガラシデザインスタジオを設立して、代表を務めています。
また、デザインの仕事と並行して、武蔵野美術大学空間演出デザイン学科で教授もしています。
私のスタジオでは、ショップや公共施設などのインテリアデザインから、イベントなどで空間を彩るインスタレーションなど、空間に関わるデザインから、椅子や机などの家具や花瓶などモノのデザインまでをも手がけています。
また、空間ともモノとも言える存在である、子どものための遊具デザインも特徴的な仕事のひとつです。
大学では、これらのスタジオでの仕事と同じジャンルのデザインを教えています。

五十嵐さんのデザインされる空間には、表現の中で色が特徴的に使われているものが多いように感じました。
今まで手がけられたお仕事の中で、特に色を意識したお仕事を教えてください。

五十嵐久枝さん:
PLAY WITH COLOR というキッズスペースの提案で、おもちゃではなく「色」そのものを遊び道具にしました。
それはクレヨンでも色鉛筆でもなく「絵の具」の色です。刷毛や手に付けた絵の具を壁にペタペタ着けたり描いたりするうちに興奮してきて、飛び散らかしてしまう。普段はあまりしない遊び方ですが、子どもであれば誰もがやりたくなる遊びだと思います。その遊びの痕跡をデザインモチーフにして壁面やガラスパーティションをデザインしました。
そこに子どもが一人もおらず、おもちゃも遊具もなかったとしても遊びの痕跡が存在することで、ここが遊びのスペースだということを感じられるはずです。その感覚をきっかけに、さらに遊びが始まる空間となることを想定しました。
使う色に加えて、描き方の勢い・かたち・大きさによって、どんな気分で遊びに夢中になっていたのか、たくさんの想像をかき立ててくれるのがとても面白いと思いました。

色とかたち、大きさの組み合わせによって、その背後にある気持ちや遊びまで想像できてしまうのがとても興味深いです。
使う色が違えば、印象がかなり変わってしまうと思いますが、どのように使用する色を決められているのでしょうか。

五十嵐久枝さん:
使う色に加えて、その使用面積によっても感じ方が大きく変わるので、机上のみで決めてしまうことはほとんどありません。実際の空間の様子を想像しながら、実験を何度も繰り返します。
また、対象とする人や時間によっても色の傾向は変わってきます。
使用色はあえて決めないようにしているのですが、大きな考え方で言うと、子ども向けの場合は1段階淡い色を選択し、
大人がターゲットのブランドであれば使用色に1段階深みを与えるような意識を持っています。
色はキャラクター(存在)であると同時に雰囲気(不在)でもあり、使うたびに新しい発見があります。
まさに、無限のポテンシャルを持つ素材だと思います。

その他にも、色の使い方が面白いお仕事をご紹介いただきました。

五十嵐久枝さん:
「sogen office」
自然の草原に感じる居心地の良さを感じられるオフィススペースの提案です。
使用する緑色とその並びの順序に拘りました。手前から濃いグリーンで、後ろは淡く影のようにも見えるグリーンを
選択しています。草の高さは、座った時に隠れられるくらいの高さが空間に対して良いバランスだと思います。
五十嵐久枝さん:
「familiar PRESCHOOL」
保育園の室内壁面は、まだ数字や言葉が理解しきれない子どもでも直感的に理解できるように年齢毎に色分けしました。
また、ファサードはワクワク感とともに、周囲に注目注意を促す役目となるような配色と形状を目指しました。

時には自然の風が感じられるような雰囲気であったり、思わず走りたくなるようなワクワクする空間など、色とかたちを意識してコントロールすることで、ここまでいろいろな印象が生み出せることに本当に驚きました。
ご自身のスタジオでは、これらのお仕事のように、何か色の工夫をされているのでしょうか?

五十嵐久枝さん:
長時間目にするインテリアは、基本的に白でニュートラルにしているのですが、建物の外観はうすい黄色で塗ってあります。
普通だと通り過ぎるだけの場所なので、気分を少しあげられたら良いなと思い、この色を選びました。
春にはアカシアの黄色い花も満開になるので、近所の方と楽しんでいます。

アカシアの花色まで考慮して選ばれた外壁のうすい黄色は、主張しすぎず、でも確かな存在感を感じます。
花が満開になれば、ついつい足を止めてしまいそうですね。
ROOMBLOOMでは189色の豊富なカラーがあるのですが、ニュートラルなインテリアの中でどこか塗り替えてみたい場所はありますか?

五十嵐久枝さん:
トイレは、パーソナル空間でもありますし、一面だけ色を塗ってみたいと思っています。
色は、リフレッシュできるグリーン系の RB-75GY19 green tea が良さそうです。
具合が悪い時は長時間いることにもなる場所でもあるので、明るく清潔感を感じられるように選びました。

「色」「かたち」「大きさ」のバランス検証を重ね、リアルなスペースでの実験を繰り返した先に、
はじめて「感情」を動かすデザインできるのだなということがわかりました。
色はキャラクター(存在)であると同時に雰囲気(不在)でもあるという五十嵐さんの色についての考え方は、
日々の暮らしに色をうまく取り入れられない人にとって、大きなヒントになると思います。
空間の象徴となるような色使い(アクセントカラー)と、全体の雰囲気を作る色使い(ベースカラー)という大きな2つが存在するということを踏まえて、壁の色や家具の色、そこにレイアウトする小物の色を考えるようにすると、全体がひとつのまとまりを持った心地よい空間になるはずです。
まずは、家の中で「キャラクター」となるような象徴的な色を設定してみるのはいかがでしょうか?

インテリアデザイナー

五十嵐 久枝さん
Hisae Igarashi

桑沢デザイン研究所卒業、‘86-91クラマタデザイン事務所在籍、‘93イガラシデザインスタジオ設立。商業施設から保育園等の空間デザインと家具・プロダクト・遊具等の立体デザインを主とし、「衣・食・住・育」の分野に関わる進行形デザインを展開する。主な仕事はTSUMORI CHISATO、une nana cool、familiar PRESCHOOL、baguette、AWASE等。‘16年CSデザイン賞準グランプリ、グッドデザイン賞、JCDデザインアワード、キッズデザイン賞等受賞。
グッドデザイン賞審査員。武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科教授。
www.igarashidesign.jp