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ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

カラートーク vol.03 陶芸職人 岡本純一さん

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vol.03

あわびウェア代表/陶芸職人

岡本 純一さん
Junichi Okamoto

「色」を専門的に扱うクリエイターの方々の、「色」に対する考え方やこだわり、実践しているアイデアをご紹介するインタビューコーナーCOLOR TALK。 もっと自由に楽しく「色」を扱うためのヒントが満載です。
Vol.3は、兵庫県淡路島の美しい自然に囲まれた工房で、受け継ぐ器をコンセプトに、日常の生活に溶け込む食器を制作されている、あわびウェア代表兼陶芸職人の岡本純一さんにお話を伺いました。

2009年までは東京で暮らし、お仕事をされていた岡本さん。
現在、「あわびウェア」として活動されている淡路島は、岡本さんのご出身地でもあります。
ご家族で淡路島にUターンされて早7年。日々どのように暮らしているのか教えてください。

岡本さん:
現在は、淡路島の大町という、のどかな田舎町に工房を構えて、家族+猫二匹(白とサビ)とともに、築80年の古民家を修復して住んでいます。不便なこともありますが、逆にそれを心地良く感じられるのが田舎暮らしの良いところです。
竹林と木々に囲まれた民家の周りには、夏になるとホタルが舞い、蚊が大量発生し、冬になると星空を楽しみ、極寒に震えて、家族川の字で寝ています。趣味は古道具を見たり集めたりすることですね。
昔の名もなき職人によって、用のために作られた道具は美しく、私のものづくりの核として、また師として、日々教わることばかりです。

受け継ぐ器という「あわびウェア」のコンセプトがとても素敵な言葉だと感じました。
コンセプトにはどのような想いが込められているのでしょうか?

岡本さん:
今から少し先、子どもたちが大人になった時の食卓を想像することがあります。
それは長く使ってもらえる器を作りたいと思うからです。
どこかの時代の温かい食卓に、あわびウェアが使われているとすれば、それは本当に素敵なことだと思います。
「淡路島の美しさ=淡美(あわび)」を大切にし、江戸後期から明治期に栄えた珉平焼(淡路焼)の制作スタイルに学びながら、普段使いできる日用食器(ウェア=製品)をつくっていきたいと考えています。

あわびウェアの器は、他では見たことの無い素敵な色のものがたくさんあって、使うたび食事が楽しくなりそうです。
これらの色はどのように決めているのでしょうか。

岡本さん:
制作スタイルを参考にしている珉平焼(淡路焼)は、アンティークの器として人気が高く、何と言ってもカラフルな色使いが特徴です。一見奇抜に見える珉平焼の色や形を、少しだけシンプルにすることで、個性がありつつも現代の私たちの食卓でも大活躍する器が生まれるのです。
日本の食卓は季節感を最も大事にしてきました。トルコ青のような鮮やかな色も、夏野菜のトマトや冷製パスタなどに使うと涼やかさを加えてくれます。ただ器の色が強くなりすぎないように、季節やお料理と調和するように心がけています。

器としてだけではなく、そこに盛られるお料理や食卓までを想像されているからこそ、あのような色がうまれるのですね。あわびウェアの色を表現する上での、こだわりやポリシーを教えてください。

岡本さん:
あわびウェアで扱う釉薬*の色数は、10種類以上と多く、一つの定番の色を作るのにとても労力を要します。
釉薬の調合方法は無限にあり、その無限から一つの色を選び出すことは、とても難しいからです。
そして頭の中に作りたい色があったとしても、その作り方も無限にあるので、イメージと現実の色を一致させるには、
何千回とテストを繰り返さなければなりません。そんな中で出来上がった定番の色が、あわびウェアには数種類あります。
定番の色は一見、いつも同じように見えますが、実は、日々微妙に変化しています。
釉薬の原料が、主に自然の鉱石や土なので、一定ではないという理由もありますが、もっと美しい色があるのではないかという探求から、日々変化し、より長く使われる道具になるよう心がけています。
器は焼かれることで、何万年と使い続けられる石器のように丈夫な道具に生まれ変わるのです。

*釉薬について: 釉薬は、風化した石や土、木灰、金属、鉱物の粉末を独自に調合して作られます。調合された釉薬は、1200度を超える高温で互いの物質が相互に溶け合い様々な色や質感を生みます。また、松の薪を使って焚かれる登り窯などでは、松の燃えた灰が器に降り注ぐことで緑色の光沢ある器が焼き上がります。松の灰に含まれる微量のガラス成分や鉄分が幾十にも降り積もって生成される釉薬なので、自然降灰釉といいます。

陶芸職人としてご活躍される岡本さんにとって「色」とはどんなものでしょうか?

岡本さん:
無限に広がる宇宙のような存在ですね。さっきお話したように、釉薬の調合方法や割合により色は無限にうまれるからです。
どこまでいっても終わりはなく、探求を繰り返せば繰り返すほどに新たな可能性が見えてきます。

あわびウェアの使用例を見ながら、色の考え方を教えていただきました。

岡本さん:
日本料理では、季節感を大切にします。走りの食材で待ち遠しい季節を先取りして、名残りの食材で移りゆく季節を惜しみます。そんな季節感を演出するお料理には、食材の他に、器がとても重要な役割を果たします。
そんな日本特有の価値観は、和洋折衷の私たちの食卓でも息づいています。
あわびウェアには、いろんな色の器があります。トルコ青の器からは、夏の涼やかさを感じますし、パープルや黒の器では、しっとりとした秋の雰囲気を感じます。器の色を通して、日本人が大切にしてきた季節感を楽しんでいただければ嬉しく思います。
岡本さん:
最近、定番カラーの仲間入りをしたパープル。一押しのカラーです。
でも、何を乗せたらいいか、どんな料理に合わせればいいのか、難しいとの印象をよく持たれます。
そんなパープルの器ですが、実は、とっても使い勝手が良く、どんなお料理も合ってしまうのです。
しかも、日常の食卓をおしゃれに演出してくれます。すこーし背伸びして訪れたレストランのように。一度試してみてください。

お仕事では、気の遠くなるような回数のテストを繰り返して、1色を決められたりすると思うのですが、
ご自宅の中で、色の使い方で工夫されていることはありますか?

岡本さん:
陶芸を生業にしているので、たくさんの器を持っています。アンティークから作家物、工業製品のものまで多種多様です。
自社製品もあるので、本当にたくさんの種類や色の器たちです。
いろんな色がありすぎて食卓にまとまりを欠いたり、器がお料理を引き立てない、ということがあります。
そんな時は、3色以上の色を使わないようにすれば、食卓にまとまりが出ます。なんといってもお料理が主役なので、
器が前に出過ぎないように器の色使いは2色くらいにとどめておくのがオススメです。

ROOMBLOOMでは189色の豊富なカラーがあります。
お仕事場所かご自宅で、イメージを変えて見たい場所はありますか? また、気になった色も教えてください。

岡本さん:
ROOMBLOOMは耐熱ではないと思うのですが…。もし可能なら、窯場の壁と地面、天井の色、そして窯の色も変えてみたいですね。4台ある電気窯は、常に高温になっているため冬場でも暑いほどです。
できることなら少し涼しげな色の空間に変えたいです。
色はRB-05G02 green Alaskaが良いと思いました。グリーンアラスカというネーミングと、ツンドラな感じの色合いが気に入った理由です。まず壁は塗ってみたいですが、窯も含めてgreen Alaska色になった空間だと、窯人も文句を言わず、涼しげで仕事もはかどることでしょう。

生活にすっと馴染み、どんな食事とも合わせやすいあわびウェアの特徴的な色は、数え切れ無いほどのテストによって
生まれた色でした。日常生活にすっと馴染む、本当の「普通」をつくるのは並大抵のことではないんだなと感じました。
そんな普通をやってのける岡本さんからのアドバイス「主役のお料理を邪魔せず、器が前に出過ぎ無いように色使いは2色がオススメ」は、ものすごく説得力があります。すぐにでも実践できそうなので、まず試してみてはいかがでしょうか。

あわびウェア代表/陶芸職人

岡本 純一さん
Junichi Okamoto

1979年-淡路島生まれ、1998年-武蔵野美術大学彫刻学科入学、2004年-武蔵野美術大学大学院美術専攻修了。
その後、同大学助手を経て、大学、高校の美術教育に携わる。
2001年 柳宗悦「民藝論」に出会う。その後、各地の民藝館、窯場を巡る。
2010年 淡路島に移住。
2012年 「Awabi ware」を屋号に瀬戸内生活工芸祭に初出展、その後、西日本、関東などを中心に活動。
2016年 「株式会社あわびウェア」設立、代表取締役兼職人として変わらず陶器制作に励む。
http://awabiware.net