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ペイントで変わりはじめる、私の暮らし

Asia Young Designers Award / AYDA

当社がアジア一円で開催する、建築を学ぶ学生向けのアイディアコンペ「Asia Young Designer Award」。
このコンペを通して見えてきたこと。
それは、これからはよりグローバルに社会の課題が共有され解決を模索する方向にあるのではないかということ。
社会問題が多様化、複雑化する中で、よりよい社会のためのソーシャルデザインについて、“ここちよい共生”をテーマに、
ソーシャルデザインの第一人者 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科長 中村陽一教授と注目の建築家 仲俊治氏、西田司氏、
そしてモデレーターには建築コミュニケーターとして活躍の田中元子氏をお招きしトークセッションを開催しました。

1.建築から考える日本の今。

(田中)
今夜のテーマ、ソーシャルデザインから建築を考える心地良い共生ということで、お三方にお集まり頂きました。
さっそくですが、具体的にソーシャルデザインのお話に入る前に、まずは日本そして世界における社会の課題からお話を伺いたいと思います。
(中村)
まず、日本と世界の課題について、みなさんもお聞きになっていると思います、人口減少少子超高齢社会。これは、どんな業種業態の企業でも、直接間接の違いはありますが、関わってくると思います。
中国、韓国、シンガポール、日本ももちろんそうですけど、それぞれ極めて高齢化が進展している。つまり、アジアが老いていくということです。
私は、そこに対して、2つ大きな方向性があると考えています。1つは当然誰もが考えることですけれども、シニアに焦点化して社会の仕組みとか運営を考えていくこと。そして、もう一つの方向性として忘れてはならないのは、次世代ですね。若い世代に対するまなざしを忘れると当面の視野は持てても、それより先は持てないということになるのです。
世帯のあり方も、いまや懐かしい言い方なんですが、夫婦と子ども二人の合計4人というのを、標準世帯と呼んでいたんです。
それを基本設定として、あらゆる商品が考えられてきたんですね。ところが今や単独世帯が主流です。いわゆる核家族、標準世帯がもはや主流ではない。
そういう中で、どういう課題が考えられるかというと、当然社会的課題が複雑になりますので、社会保障に関するコストは増加していく。当然国の財政赤字が増える。そういう中で貧困という問題は、たとえばアジアというものを眺めても、いわゆる途上国の問題だという風にかつては考えられていた訳ですが、日本のように豊かな社会といわれている中で格差と貧困といわれる、ソーシャルエクスクルージョンが生じるということになります。
次世代ということを先に申し上げましたが、そこを考えるときにはチャレンジをしやすい仕組みに変えていく必要があります。
例えば地域でよく起こることですが、今私はある公共施設の大規模改修に関わっているんですれけれども、非常にお金がかかるという話になっています。バブルの時代30年前とはいえ、70億で建てて、大規模改修で80億かかるとなれば、当然もめますよね。そんな金があるんだったら、福祉にまわせとゼロサムの話になりがちなんです。しかし、そこを考えてしまうと結局ますます若い世代にとっての居心地の良い場所であるとか、チャレンジをするための基盤になるスペースがなくなっていく、子育てがしにくい、つまりシニアにとってもおそらく暮らしにくい社会になっていく。
そこで解決をどうするかというときに、行政がこれまでやるもんだと言っていましたが、最近でいうとコミュニティビジネスとかソーシャルビジネスの可能性が拡大していくことになる。
けれども、そこもまだまだいろんな資源が不足している、そこのソーシャルセクターがどうやってスケールアップ、スケールアウトしていくかが大事になってきている。そしてその背景には、今までは行政が担当していた課題、ボーダレス化したいわゆるグローバルな課題、環境、食料、それから、逆にもっとローカルな課題というのが展開しています。
今日は、建築に関わる方、そしてソーシャルデザインに関わる人間がそのような課題に対して、どのようにできるかということを考えていければと思います。
(田中)
仲さん、いかがですか?
(仲)
中村先生より標準世帯というお話がありましたが、まさに同じ繰り返しをしてしまうのですが、もっとも大きな社会課題、これは世界も日本も共通ですが、一住宅一家族のシステムの破綻だと思っています。例えば、50年前には4人家族父母こども2人というのが主流であって、それが標準とされていて、国家の行政が計画されてきました。ところが、それが家族のあり方の変化にともなって壊れてきている。家族の規模が小さくなってきている、あるいは1人世帯が最多になっている、あるいは一人当たりの税金や社会保障の負担額が年々増加してとどまることを知らない状況にあり、家族というものが、自助の単位として機能しなくなってきている、そういう閉塞感があると思います。
なので、家族の中で助け合って、なんとかするという家族が担っていた役割があったわけですけれども、これを地域で確保するという議論になるのですが、それは実は建築の分野から考えるとなかなか容易なことではない。という風に考えています。
というのは、一住宅一家族というシステムを構成する住宅にこそ問題が潜んでいると考えているからです。
その住宅の問題というのは、居住専用住宅と建築の分野ではいうのですが、それが孕んでいる問題だと思います。昔は工業の生産が下がってしまうということで良くないとされていた訳ですが、建築や都市において2つの発明がなされました。
一つは郊外の一戸建て、そして、もう一つは都心において、オープンスペースをとって高層化するという集合住宅という二つの類型です。
いずれも食べてお風呂入って寝るという場所で、稼ぎは住宅の外に追いやられたということです。
標準世帯が自己完結的に住むということが前提とされて、お父さんは、電車にのって工場やオフィスにいく、お母さんは家を守るという性別の分業みたいなものができた。あるいは都市計画においても住宅地、商業地、工業地といったかたちで縦割りがなされた。昼間に誰もいない町ができたりした。生業の空間をもたない、そういう住宅が普通のように我々は今は思う。
ところが、前向きな話としては、情報革命という話があります。農業革命があって、産業革命があって、今は情報革命。そうすると、生業がまた変化しますよ、工場やオフィスで集約的に労働するということではなくて、情報技術が支えていろんなところで仕事ができるあるいは、1人が一つの会社と契約するのではなくて、2つ3つ仕事ができる。あるいはちょっとやってみるということがやりやすくなる。そういう時代になってきている。つまり、一人ひとりに分断されてはいるけれども、一方でこういった情報技術の力を使って、また新しいライフスタイルが描けるのではないかと、そういう日常がつくれないかなということに今、非常に興味をもって設計をしています。
(田中)
続いて、西田さんお願いします。
(西田)
僕が独立したのが1999年で、「めっちゃ住みたいけど狭い」とか、「小さくてもいいから自分の家の中にお店を作りたい」とか、「住宅地のど真ん中に明るくて楽しい生活をしたい」とか、東京の中にいろいろな建物ができはじめました。住宅を一般の人が建築家に頼もうという時代背景とともにだんだんと仕事をやってきました。
ところが、最近感じるのは、住宅買う人が減ってない?ということで、持ち家比率が下がっています。なぜかと考えると、一つは平均所得が下がっている。それにより、ローンを組むのが大変になった。ものを買って自分のものにする、所有するという欲求が減衰してきていると感じます。買いたいと思うけども、買えない時代がやってきた。そうして、しょうがないから変わった価値が生まれてきたのではないかと。
所有するという感覚からもうちょっと時間をみんなで共有しよう。何を共有するのか?最近はシェアということがよく言われるが、例えば、車をシェアするUberとか、ホテルをシェアするairbnbとか、オフィスをシェアするコワーキングスペースとか増えているんですけど、最近僕が注目しているのは、プロジェクトを一緒に育てる感覚をシェアする、要は場所とかものをシェアするのではなくて、物事を育てていく感覚をシェアするというもので、これは、ギャザリングというみんなで持ち寄ってやるパーティーなんですが、シェアという概念を説明するのにちょうど良いです。通常のシェアって、1個の大きなケーキとかをみんなで分け合って食べようよという感覚なんですね。ギャザリングはちょっと違って、自分が持っているものを少しずつ持ち寄って、時間だったりものだったりお金だったり、持ち寄った結果の多様性がよくない?ということ、他の人の違う価値が集まる、この影響しあうこと=do disturb(もっと影響し合おうよ)という感覚にだんだん社会がなっているのかなという風に感じています。
一つ、横浜の事例を紹介します。これは、子どもが公園にいったときに、遊び場がないと感じている30代から40代の親がはじめたんですけど、人工芝をひいたり動かせる遊具をつくったり、地域の方と一緒に防災訓練をやったり、炊き出しをやって食事をつくるのを楽しんだり、やってみると反響がよいと分かってくる。
その次に、みなとみらいで防災を前面に押し出してキャンプで寝ようとか、テントを建てられる教室をやったりし、防災の感覚を育もうという活動をおこなっている。
2つ目やってみて、よかったので3つ目をはじめた。どんどん仲間も増えていった。
これらをやって行く中で、意外と街中には公園だけじゃなく公園みたいな場所がたくさんあるのかなという風になってきた。プロジェクトを育てるというのは、意外と町ぐらいのスケール感でも育てられるのではないかなというのを感じました。
やっぱりこれまで建築を作っていくには、土地があります、標準家族があります、であったが、そうではなくて、都市をどういう風にアクティブにしていくのかということを考えるところに建築というすばらしい環境装置があるので、そのあたりを含めて、社会の課題とかデザインと建築を今日は議論できると良いかなと思っています。

(2.“with”のソーシャルデザイン。へ続く)